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サングラス

 木曜日、朝9時より大学選手権準々決勝をテレビで観戦。ネット出品作業や梱包などだだら仕事しつつ要所要所しっかり観る。第一試合は流通経済大、第二試合は神奈川大の勝利。神大の準優勝左腕濱口と今秋ドラフト候補大商大岡田の対決は面白かった。岡田、ストレートは即戦力。変化球は神大の各打者に見極められていたように見えた。タイブレークの末、神大は今年もベスト4進出。一昨年の桐蔭横浜大学から神奈川大学野球連盟代表は3年連続でベスト4以上ということになる。第3試合は上武大が九産大に競り勝った。今年の上武大は打線もいいし守備ももちろん鉄壁、優勝候補最右翼か。早稲田との準決勝が今から楽しみ。その早稲田、専修に思った以上に苦戦した。結局丸子が決めたが、専修が112塁からの中途半端なバントで併殺にならなかったら勝敗の行方はどうなっていたか。それでも茂木や丸子といったタレント揃いの今年の早稲田はいいチームである。高橋広監督色が早くも滲み出ているように思った。で、18時を回ってからは西武VSカープも始まったものだから、大忙しである。大学選手権とカープ戦を慌ただしくチャンネル切り替えながら観戦。法政出身の武内が久々の先発だったので勝たしてあげたかったが、残念ながら負けた。中継ぎの今井がとてもよかったので、それだけが救い。5連敗していたジャイアンツは堂上の活躍で勝利していたが、原監督はこうやって二軍と一軍の選手を激しく行き来させることによってチームを活性化し苦境を乗り越えるのが上手い。かたやカープと来たら、どんなに不振の選手でもしつこく起用する。二軍の下水流を何故上げてあげないのだ?横浜高校出身選手活躍の波に今こそ乗るべきだと思う。DNAは乙坂を上げて、その乙坂はすぐに結果を出したようだ。ほらね、今年は横浜高校キてるんだよ、松坂以外。渡辺監督勇退の夏に向けてみんな張り切ってるのが伝わってくるよ。とにかく競争のないチームは勝てないのだ。とはいえ、緒方監督もやっと動き出した感はある。菊池の送りバントが減った。盗塁のサインを出すようになった。いいか悪いかを別にして、先発の大瀬良をリリーフ陣に加えた。…などなど。シーズンなんてあっという間に終るのだからいろいろ試してみないことにはね。それにしても、今季初先発かつプロ未勝利の武内には酷すぎる西武の強力打線だ。首位打者を争う秋山から、栗山・浅村・中村・メヒア・森までの6人はヤバい。よく4点に抑えたというべきだろう。2番の栗山は最早ベテランであるが、その栗山が育英高校時代、夏の甲子園で戦い圧勝した沖縄県代表校が県立那覇高校である。今までも何度も書いてきたが忘れられない甲子園代表校のひとつ。左利きのキャッチャーやサード、個性的なバッティングスタイルの選手たちで大いに話題となった那覇高校であるが、類希なる身体能力を持った成底和亮のチームでもあった。当時2年生。140キロ前後の速球、バッターとしても中軸の彼の活躍で1回戦中京商業に勝利したともいえる。育英高校には負けたけれども、それこそ栗山のような非凡な選手を擁した強豪だった。ちなみに中京商業はエラーによって那覇高校に惜敗するのだが、そのエラーした選手こそ当時2年生、昨夜はサヨナラホームランのソフトバンク松田宣浩である。成底とは同期ということになる。成底は沖縄国際大学に進学、いちど九州代表として神宮にもやってきたことがあった。興奮して応援に行ったことを思い出す。恐らく成底が4年の大学選手権。その後彼は沖縄電力に進む。都市対抗に来たこともあったが東京ドームで彼のピッチングを観た記憶はない。それくらい印象に残った選手であったし、印象に残った那覇高校であった。その後那覇高校は甲子園に駒を進めたことはない。で、或る1本の映画を観た。つい最近チャンネルNECOで放映された『ホームレス理事長』という東海テレビ製作のドキュメンタリー。大ヒット漫画に因んでルーキーズというNPO法人を立ち上げた男の悪戦苦闘を描いた作品である。そのNPO法人は、高校中退して野球ができなくなった若者を集めて定時制高校に通わせつつ野球を続けさせることを目的としている。野球強豪校に入学したものも様々な理由で挫折し退学した若者たちがそこに集う。その趣旨だけでドキュメンタリーが1本作れそうだが、この映画の主役はあくまで理事長の山田豪氏だ。とにかく資金集めに奔走し続ける。家を失って漫喫で夜を過ごす。昼間はスポンサー探し。「フリーターとかになって年金も払えないような若者を再教育して社会に貢献させる」みたいな口説き文句で出資を迫る山田だが、その山田が漫喫で寝泊まりしているという現実が面白過ぎる。集まってる若者は当たり前だが脛に疵持つ高校中退球児たちなのでやんちや系か家庭に事情を抱えた子か、いずれにしろそれぞれに「ドラマ」を内包した子ばかり。そのうちのひとりの男の子が仲間に叩かれたとかで監督に訴えた。心なしか面倒くさそうに話を聞く監督。そして全員の前でその訴えた子に「告発」させるのだ。チクられた子はふてぶてしく「訴え」を否定。監督は明らかにチクった子に対してイライラしている。「いちいちそんなことを俺に訴えるなよ」と言外にメッセージをこめているようだ。何だこいつは?ロクでもない監督じゃないか!?唖然とする。しかし、衝撃はそのあとだった。監督のプロフィールがテロップで紹介される。「2000年、沖縄の県立高校を甲子園に導いた」「2005年おかやま山陽高校で部員を殴り逮捕…」。池村秀樹監督!あの、高校野球の常識を打ち破る奔放なチームで甲子園を湧かせた那覇高校の監督が何でこんなところに?しかも、あの「おかやま山陽高校事件」の体罰監督は那覇の池村監督だったのか、と云うショック。「おかやま山陽高校事件」とは野球部員に裸でランニングをさせていたという異常な体罰事件として記憶に刻まれている。監督の体罰は日常茶飯事でしょっちゅう高野連から処罰が発表されているが、高校球児の「××ランニング」はショッキング過ぎてよく憶えていた。ただ。迂闊にも那覇高校の監督だったとは認識していなかったのである。選手たちに自由なスタイルで野球の楽しさを教えていた(と勝手に思い込んでいた)沖縄の「名将」がこんなところに流れ着いていたなんて…。衝撃映像は続く。こんどは先ほどの男の子が自傷行為で試合に遅刻したと監督に報告したことを受けて。池村監督はビンタを連発!実はこのビンタシーンが問題になってフジテレビでは放映見送りになり、映画化の運びとなったようだ。しかし、だ。家庭の問題で傷つき自傷行為にまで及んだ子供を殴るかふつう?この前科持ちの監督はヤバい!那覇高校から手腕を買われて移った学校で警察沙汰にまでなった男はどんな人生を歩んできたのか、その暗い双眸或はサングラスの向こう側が気になる。那覇高校の監督の頃とは別人のような雰囲気なのだ。おかやま山陽高校でどんな時間を過ごしたのか、むしろそこを掘り下げて欲しいと思う。だが、主役は理事長だ。挙句、山田理事長は借金の支払い期限に天パリ撮影隊にまで借金を申し込む、土下座で。そんな美味しい場面を捉えられてスタッフも心の中では快哉を叫んだのではないか?かなり困惑しながらもカメラは廻し続けていたから。映画はドキュメンタリーとは思えぬほどに面白いのだが、もう少し人物を掘り下げて欲しかったと云う気もする。たぶん敢えてそういった登場人物の「背景」は省いたのではないかと推測する。いまそこに生きている「彼ら」だけで映画は確かに充分面白いから。ただ、なぜ山田理事長はホームレス生活になってまでNPO法人ルーキーズの為に金策に駆けずり回るのか?それが伝わって来ない。ドロップアウトした球児にもういちど「再生」の場を。その志はわかるのだが、執念というか情念の理由が見えなて来ない。そして、生徒たちにとって「野球」がどんなポジションを占めているかもよくわかるのだが、理事長や池村監督にとっての「野球」を問うてみて欲しかった。個人的には。いまNPO法人ルーキーズのホームページを見るとチームは確実に強くなっていることがわかる。運営が順調かどうかはわからない。新しいチームを立ち上げたらしい池村監督の現況はわからなかった。そして、沖縄電力のチーム名鑑からもいつしか姿が消えた成底選手の「近況」の一端を、なんとyou tubeで発見。成底選手の結婚式のときに上映されたと云うその動画は実によくできていた。あの「那覇高校の奇蹟」を思い出して、あのときの感動を裡に甦らせた。しかし、那覇高校野球部の仲間たちが製作したというその映像に那覇高校の池村監督は写っていなかった。意識的にカットしたかどうかまではわからないが、沖縄から岡山の私学にトラバーユして挙句「犯罪者」となってしまった「恩師」は「タブー」になっていても不思議ではない。自由奔放で個性的なチームによって甲子園に出場し、負けて尚「高校野球ってなんだ?」と我々に激しく問いかけていた或る高校野球部の監督が、「勝たなければ意味がない」と選手を叱りつけるまでに変化せざるを得なかったその理由とその昏い日々に思いを馳せる…。

at 21:33, 古書赤いドリル, -

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元・球児, 2015/10/20 1:13 AM

たまたまここに辿り着きました。
関係者の一人です。
池村秀樹さんは、「ホームレス理事長」が東京で上映される数日前に亡くなりました。
脳内出血でした。成底君の結婚式の1〜2月前だったので、触れにくかったこともあったのかもしれませんね。

赤いドリル, 2015/10/21 3:23 AM

ご教示有難うございました。いろんなことが交錯していたんですね。驚きます。










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