<< 8月19日、中村計さんの新刊を読む。 | main | 逆旅 >>

続き

「あの夏」から10年目の今年の決勝戦は、まるで中村計さんの『勝ち過ぎた監督』の出版を祝う様な、不思議な因縁に彩られたカードになった。駒大苫小牧以来10年ぶり決勝進出、南北海道代表北海高校。勝てば香田監督に並ぶ最年少優勝監督となる33歳小針監督率いる作新学院。手前味噌ではあるが2011年以来、近い将来優勝するだろうと、毎年私的優勝候補に挙げてきた作新学院がついに決勝戦まで辿り着いたと感慨ひとしお。対する北海高校は不思議なチームだった。拙攻、エラー連発、立ち上がりがいつも危なっかしいエース大西…。終ってみれば勝っている。つまり実力があるのだ。好投手だらけで話題にのぼるのは「顔」ばかりの大西だが、ストレートは140キロ、キレのいいスライダー、クレバーなピッチングと投手偏差値はかなり高い。変な喩えだが、大西君だけプロ野球のローテションピッチャーのように、いい意味で淡々と投げていた。150キロ出して注目集めようとか、この打者を絶対打ち取ってやる!!とか、そういった余計な「力み」がないというか…。味方はかなりエラーを連発するのだが、エラーのビフォアアフターのピッチングがあまり変わらない。聖光学院戦も秀岳館戦も味方が致命的なミスをしているのに勝った。何よりも心がタフなピッチャーだった。で、決勝戦。作新学院がいつも通りの攻撃的な野球で優勝。北海高校はずっと「タイムリーファインプレー」とも云うべき「強運」で勝ち上がった。聖光学院戦も秀岳館戦も「ここで打たれたらヤバい」と云うピンチを信じられない様なファインプレーで切り抜けた。思い切りのいい守備が「売り」の北海だったが、ノーアウト満塁で決定的なミス。審判のジャッジは確かに怪しい。しかし、ミスが出たときに必ず「火消し」してきた大西君の心が遂に折れた…ように見えた。或は、作新学院の強打が大西君の「平静」すら打ち砕いてしまったか。常に、「自分たちの野球をやる」というのは簡単そうで難しい。地方大会で犠牲バントを多用しなかったと云う山梨学院高校は甲子園で見た限り、ほぼ手堅く送って来た。結果、強力打線は開花せぬまま甲子園を去った。作新学院はどうしても先制点が欲しい決勝戦ですらノーアウト1塁から強行し併殺打。流れが悪くなりそうなのに次のチャンスを同じ強行策でものにした。決してぶれることがない小針野球。それはただ送りバントをしないというだけではない、ノーアウト1塁をいかにアウトカウントを増やさずして進塁させるかを徹底的に突き詰めた小針スタイルだった。何度も失敗しながらも、恐らくいろんな関係者に散々ボロクソ云われながらも繰り返し繰り返し練習して来た「成果」である。今年のベストゲームは、その作新学院と木更津総合の一戦だろうか。作新学院は花咲徳栄と木更津総合という関東の有力校と立て続けに戦う羽目になりしっかり勝ち上がった。花咲徳栄の高橋君、木更津早川君と対戦した作新学院にしてみれば明徳義塾は与し易かったかもしれない。その高橋君、早川君と全く引けをとらない凄みがあったのは広島新庄の堀君か。去年とは見違える程よかった。特に球数が増えれば増える程に球は走った。横浜の藤平君はいいとき悪いときの差が激しいが、早川君と堀君は甲子園では常にベストピッチに近いものを出していたように思う。やっぱり甲子園は面白い。

at 14:01, 古書赤いドリル, -

comments(0), trackbacks(0), - -

comment









trackback
url:http://blog.aka-drill.com/trackback/740