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逆旅

 野戦之月の公演を観に行く。南武線の矢川という駅から徒歩4分の公園。こじんまりとした可愛い駅だった。テントの受付で整理券貰ってベンチで本を読んでいると石神井書林さんがあらわれた。石神井さんも今日だったんですね、声を掛ける。千秋楽ということもありかなりお客さんは入っていた。タイトルは『渾沌にんぶち』。

 

 

 あたかも「長編詩」のような、詩的すぎるアジテーションのような科白が舞台に溢れ受け止める側のキャパシティを軽々と超えてしまう。いま、ひとつひとつを思い出したいけれど、断片しか甦らないのが悔しい。    

 

 

 「逆旅」。

 

 【天地はあらゆるものが出入りする宿屋のようなものである。天地は悠久であるが,人はここに仮住まいしているはかない存在である】ということらしい。 難民、流民。それは水のようなものであり、誰かが拒んだり追い出したりできるものではない。この「場所」は「逆旅」であり、まだ見ぬ「広場(=逆旅)」が何処かにあるのかもしれない。

 

 

 ラストシーン。広場を目指す「流民」たち。桜井大造は「30年ぶり」に「遺品」である黄色い頭陀袋の「重し」を下ろす。俳優たちが朗々と謳う中央で、後ろ向きの桜井大造は黄色い頭陀袋を逆さまにしている。大量の砂が零れ落ちている。山岡強一が遺した何かを「重し」として掲げていたけれど30年経っていったんそれを下ろしたということか。「広場」を目指す新たな旅がはじまるということなのか。なんというか、特別な「物語」があるわけでもないのに、その圧倒的な終幕の場面に強制的に泪が零れ落ちる。あぶない。

 

 

 終演後、近くの居酒屋で石神井さんと呑む。曲馬館、水族館劇場、野戦之月、アングラについて、古本屋のことなど。特別な夜になった。

 

 

 石神井さんとふたり、駅のベンチに腰掛けて帰りの南武線を待っていると、駅前のスナックから酔客のものと思しき歌声が漏れ聞えてきた。ここは何処だ?ぼくは何処にいるのだっけ?唐突にそんな疑問が首をもたげる。

 

 

at 08:18, 古書赤いドリル, -

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