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フィ

 フィとは歌舞伎町で出会った。15年前の4月。歌舞伎町の雑居ビルの1階のペットショップ。その頃、ブラックタンのチワワを探して都内のあちこちのペットショップを回っていた。ついにその夜、「この子だ !」と思える名もない黒い子犬をぼくらは見つける。生後2ヶ月。すぐその場で衝動買いしたのか、翌日もう一度行ったのか、そこは記憶が曖昧。35万円。買って、段ボールに入った黒い子ネズミを自宅に持ち帰るときの興奮。歌舞伎町のまちを、ゴソゴソ音のする段ボールを抱えて駐車場へ。そのワクワクした気持ちが今少し甦った。フィフィと名づけた。ネズミのようなシルエットにちなみ。最初はよく哭く子だった。子どもだから当たり前か。一週間くらい我慢してたけど、それからはフィも一緒にベッドで寝るようになる。最初はあまりの小ささに緊張していた我々だったが、すぐに馴れた。それから、何処へ行くのも3人で。明徳の試合を観に高知の県営春の球場に行ったときも、確か三沢の寺山記念館にも、とにかくあちこちに。2007年に長男、2012年に次男が生まれ、それとともにフィも少しずつ歳をとり、15歳になる。1〜2年くらい前から「歳とったなあ」と思うことが多くなった。とにかく健康な犬だったので、急速に歳をとり始めた感じがした。そして、4月の上旬から体調を崩し、4月26日に死んだ。最後の3日間は幻覚を見ているのか、苦しいのか、辛そうだった。2週間全くごはんを食べてなくてぽっちゃりの面影なく、ガリガリになったからだをなでるしか術がなく。最期の時、小さく吠えて、目をカッと見開き、それまでの茫漠とした薄目から、一瞬だけ正気に充ちた目になり、息を引き取った。遺体のフィは元気な頃の顔に見えた。時間が経つと目は小さくなった。15年間、ずっと一緒に寝ていた。子どもが生まれてからは、フィは同じベッドで寝なくなったけど、すぐそばで寝るようになった。晩年はぼくの頭の上で寝ていた。ただ、いつ頃からか、膝の上で寝ることはなくなっていた。パソコンに向かっているときは得てして膝の上に乗りたがっていたのに。今となっては、あの重みが懐かしい。左腕に乗せたフィの顎の質量が愛おしい。

at 07:00, 古書赤いドリル, -

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