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今年の夏 其の二

 去年、下関国際高校の坂原監督の記事を読みファンになった。「文武両道が嫌い」と語る坂原監督に共感し、この人を応援しようと思った。甲子園にはいろんな学校が集まってくる。ときにやってくる進学校に、マスコミは飛びつく。参考書持参だの、練習時間は2時間だの、東大受験予定だの。その学校や球児に罪はないけれど、やっぱり狂ったように練習してきた子たちを応援したいと思ってしまう。下関国際の坂原監督は時流に反し「猛練習」を謳う、ぼく好みの甲子園のニューフェイスだった。文武両道嫌い発言でバッシングされたりもしたようだがその手腕は今夏の3季連続甲子園出場によって完全に認められたと言って良いだろう。初戦の花巻東戦は9回に追いついて延長戦で勝利。2回戦は創志学園に逆転勝利。この試合は見事だった。ほとんどの打者が3-2に持ち込むくらいの集中力で好投手西の疲労を誘う。エース鶴田も初戦よりも球速は出なかったが粘り強く投げて大量点を許さず、9回、西投手の自滅を呼び込んだ。この試合、西のガッツポーズ禁止がネット上で大いに話題になった。試合を観ていた人は皆云っているが、ちょっと異常なほどガッツポーズしていたのでぼくも違和感を覚えていた。なにせ初回の最初のバッターを三振した時から「ノーヒットノーラン達成か!?」と勘違いしてしまうほどのアクションで、「下関国際のバッターに対して何か因縁でもあるのかな?」と勘繰ってしまうほど。自分を鼓舞するためのパフォーマンスだとは思う、高見盛のようなものだろうけど、まあ、あれは審判に注意されるだろうね、と思った。ガッツポーズ禁止とかの報道が出ているが、最近は緩くなったと思う。

 

 

 

 その下関国際、創志学園に勝ったのもすごかったが、驚くべきは木更津総合戦だ。万が一大阪桐蔭がコケたら優勝してもおかしくないと思っていた木更津総合をがっぷり四つで寄り切ったのだ。その強さを支えるのは守備力である。今大会、全体的に守備力の高いチームが多い。あくまで印象に過ぎないが、エラーが少ないと思う。送球エラーも例年に比較してそんなに目立たない。下関国際はベスト8に残ったチームのなかでも最も堅実な二遊間だった。小園や根尾がドラフト候補として連日話題になっているが、ぼくのなかでは下関国際の濱松がナンバーワンセカンドである。下関国際の「菊池」だ。ちなみにショートは常葉大菊川の奈良間がいちばんだと思った。で、最強の二遊間に支えられ、下関国際は日大三高を崖っぷちまで追い詰めたが、最後うっちゃられた。都大会をヨレヨレと勝ち上がった三高だが、実はその投手陣たるや広島カープのブルペンよりも充実している。大阪桐蔭に匹敵する潜在的タレント軍団というべきか。そんな三高と互角に戦った下関国際の敗戦にぼくも落涙。どっちが勝ってもいいのだけど、淡々と投げていた鶴田が負けて、だんだんと涙が溢れていく様にはもらい泣きを禁じ得なかった。攻撃野球がトレンドのいまの高校野球に於いて、非力な選手は、揺さぶり・バント・ファウルで粘る・短く持って右打ちを徹底、本当に惚れ惚れするチームだった。付け加えるならば、非力ではあったかもしれないが、勝負強い打線でもあった。ヒットが出てない選手でも、ここぞの場面では打つ。強豪に競り勝てた要因だろう。来季以降、益々楽しみな坂原監督率いる下関国際である。    

 

 

 

 チームカラーが好対照なのが常葉大菊川である。チームカラーは森下監督時代とあまり変わらない。森下監督の頃よりも際立っているのは「ノーサイン」の徹底ぶりか。森下監督時代、印象に残っているのは大阪桐蔭に17対0で負けた試合だ。畳みかけているときはそのフルスイングは頼もしいが劣勢になると「無策」に映ってしまう。今夏、近江戦がまさしくそれで、強力打線は近江の林に完璧に封じ込まれる。最終回、近江の投手が変わると打線は覚醒し長打を連発、甲子園の空気を変えた。何より楽しそうに野球をやっているし、監督の方針は勝つことよりも「楽しむ」ことにあるようだ。従って、目の前の投手を打ち崩すためにファウルで粘ったり、コツコツバントしたり、短く持って右打ちしたりというような楽しくなさそうなことはしない。劣勢になるとどうしても「あっさり」しているように見えてしまうが、それが高橋監督の「高校野球」なのだろう。常葉大菊川が甲子園で強烈なインパクトを残した2007年頃はぼくが最もアマチュア野球を観ていた頃に重なる。多くのタレントを輩出したが今も活躍しているのはDNAの田中くらいだろうか。亜大にも出身選手が入部したがすぐに名簿から名前が消えていた。あの、伝説のセカンド町田も早大を数ヶ月でやめた。先日、NHK静岡が町田の現在を取材していた。障害者支援施設で働いていた。あれだけの素質がプロで開花しなかったのは残念だが、それも一つの野球人生だと思う。常葉大菊川の「野球」はあまりにも楽しくて、大学野球や社会人野球に馴染めないのではないかと勝手に想像している。今、亜大には常葉大菊川で活躍した栗原と赤井が在籍しているが、レギュラー獲得に至ってない。今秋以降に期待している。特に栗原は高校時代から注目されていた外野手、亜大で埋もれないでほしいと思う。ここ数年、東浜、九里、山崎、薮田、飯田、大下、大山、高橋などなど亜大出身投手はまずまず活躍しているが、野手は松田以降、さっぱり。ギリで高田。有力な野手も亜大でなぜか埋もれてゆく。大阪桐蔭の水本も正隋も1年時には活躍していたが、学年を重ねるごとに輝きを失った。今夏、レジェンド始球式に最年少で登場した本間もその一人。亜大では応援席で誰よりも目立っていたが、四年時、超バットを短く持つスタイルに変身し、中大澤村からホームランも打った。JR北海道では後年四番も務めて、都市対抗ではその個性的なスタイルを見ることができた。ずっと応援していたが、去年、引退。どうしているのだろうと思っていたら、始球式で変わらない「個性」を見ることができた。華やかな実績は残せなかったが、グラウンドでも応援席でも始球式でもその場を盛り上げることができる、記憶に刻まれる選手だった。

at 07:41, 古書赤いドリル, -

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