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采配

 今日、明石商業が甲子園行きを決めた。神戸国際大付との頂上決戦、9回のワンチャンスをものにした明石商業の地力はすごい。青木監督、呆然としてた。これによって、今年の夏、最大の楽しみができた。明徳対明石商業、次点は習志野対星稜かな。いずれにしろ高校野球の楽しみは監督にある。監督の采配にある。「怪物」だの「BIG4」だの「MAX150キロ」だの派手な肩書きのドラフト候補を見る楽しみはもちろんある、高校野球の楽しみの一要素ではあるけれど、全てではない。「甲子園」は野球で食ってくほんの一握りの生徒たちの為にある訳ではない。  

 

 昨日の高知大会決勝戦は例年以上に注目された。高知高校にスーパー一年生森木が入学し、今夏いきなり背番号1を背負ってデビューしたからだ。高知高校は中高一貫の私学強豪、明徳、高知商業と並んで高知三強の一角である。先日楽天に移籍した和田恋、日ハム公文、中日木下などプロ野球選手も輩出している。注目された決勝戦、明徳の先発は新地だった。なんと今夏初登板。決勝戦は新地とハナから決めていたらしい。最速130キロ左腕が完投勝利、単打とスクイズだけという明徳らしい試合運びで99回大会以来2年ぶり甲子園出場を決めた。しかし、驚くべきは馬淵采配である。予選で全く投げてない2年生を先発させて、勝ってしまうところが。つまり、勝てばよかったのだ、大船渡も。  

 

 大船渡高校の佐々木登板回避の賛否を巡ってめちゃくちゃ盛り上がっている。ヤフコメなど眺めていると「賛」が多いかな。ダルビッシュが得意のツイッターで支持を表明していたり。そのダルビッシュ、興南高校の宮城を絶賛していたけれど、宮城の「球数」には触れてなかった。それには興味なかったのかな。沖縄尚学との決勝戦、最後の方はフラフラしながら投げていた。痛々しかった。交代させた方がいいのではないかとも見ていて思ったが、試合後の情報によると、宮城が志願しての延長13回完投だったようだ。明らかに足にきていたのに凄い球が行っていたし、勝敗は紙一重、沖縄球史に残る激闘であったことは間違いない。  

 

 で、ダルビッシュも賛同した「佐々木登板回避」の件、ぼくは「先発回避」は予想していたが「野手として先発」、「リリーフ待機」はあると思っていたので、ブルペンにすら行かなかったことに驚いた。で、それ以来ずっとこのことを考えている。間抜けなスポーツ評論家が訳知り顔で言うように本当に「英断」なのだろうか、と。「決勝戦当番回避問題」を角度を変えて眺めると、「準決勝先発完投問題」でもあり、「決勝戦における大和田、和田のリリーフ登板なし問題」でもある。これだけ佐々木の「故障」を気にする監督が、4回戦までに佐々木に300球を投げさせた真意は何だろう。  

 

 今大会の佐々木、出場した試合は全て4番を任されている。登板のない試合は「完全休養」で野手としての出場はなかった。ただ、「完全休養」の試合は準々決勝のみであった。初戦は先発して2イニングのみ、コールド勝ち。3回戦は先発完投、このゲームも6回コールド勝ち、4回戦が延長12回194球完投。ここまで大船渡高校が起用した投手は佐々木と大和田。7月22日の準々決勝、大和田から和田にリレーして勝利。中1日の24日準決勝は佐々木が完投。対戦相手は優勝候補でもありセンバツに出場した盛岡大付を破った一関工。ここで21日に194球完投していた佐々木を登板させるのであれば、22日に投げた大和田、和田という二番手三番手投手を決勝戦で投げさせる策はなかったのか。佐々木は2年生の夏、2回戦で完投している。1番ピッチャーだった。次戦、登板こそなかったが、1番センターでフル出場している。つまり、佐々木は外野手ができるのである。登板させなかったとしても、外野手として出場させるという選択肢はなかったのか、あるいは野手として出場させることも難しいほど疲労していたのか。監督は登板させなかった理由をいくつか述べた。現時点での故障はないようだったが、それはドラフトを見据えてのことかもしれないから鵜呑みにはできない。ただ、致命的な「故障」があるのであれば、2回戦から4回戦まで、殆どひとりで投げさせた理由がわからない。「準決勝の朝、肘に違和感を訴えていた」という報道もあったがそれは絶対に考えられない。国保監督が肘の違和感を訴えた投手を起用するはずないからだ。また、決勝戦で佐々木以外の四人の投手を小刻みに継投させるのはどうだったろうか。最終的に12点は取られたが、先発が6回9失点。9点を失う前に何故投手交代させなかったのだろう。花巻東がエースの西舘を投入したのは6回、後半戦までに最小失点で試合を運べれば、佐々木を投げさせなかったとしても勝機はあったのじゃないか。ぼくの最大の疑問はその采配にある。決勝戦に限らないのであれば尚更、決勝に限ったとしても、采配次第では優勝の可能性があったと思う。佐々木の連投を避けながら、球数も抑えながら、五人の投手陣と競り合いをものにしてきた守備力で、花巻東と互角の勝負ができたのではないか。かつて松坂が肩のテーピングを外しただけで球場の空気を変えたように、佐々木がブルペンで軽いキャッチボールをするだけで、味方に勇気を与えはしなかったか。そんな「芸」の細かさが国保監督にほんの少しあれば、甲子園に行けたチームだったのではなかろうか。高校野球の監督に「英断」は必要ない、「采配」さえあれば。佐々木を投げさせずに、大船渡ナインは甲子園の土を踏めたのでは、と思わずにはいられないのである。

 

 国保監督がどういう監督なのかまだよくわからない、わかっているのは、筑波大出身で社高校の左腕エースだった坪井と同期、卒業後、アメリカ独立リーグでプレー、花巻農監督時代の2015年にはベスト8で花巻東に敗れていて、この時は菊池という投手で勝ち上がっていて連投もさせている、2017年から大船渡高校で指導、大船渡では3回戦が最高成績、ということくらいだ。3回戦が監督に着任してからの最高成績であれば、今回は先ずは「決勝進出」を目標としていたのかもしれない。それならば、準決勝でのエース登板も納得できる。併せて、甲子園に出場することによって佐々木が負うであろう故障リスクを考慮し、勝ってしまう可能性の高い佐々木を決勝ではリリーフ待機すらさせなかった、つまり、「甲子園出場」を目指していなかったという解釈が可能だ。中1日で、かつ今夏完投すらない二番手三番手投手を起用しなかったのは、決勝進出という目標を達成していたから。経験が浅いとは言っても、花巻農監督時代にベスト8を経験しているし、それなりの球歴がある国保監督が投手のやりくりを間違えるとは考えにくい。佐々木をリリーフ待機させてしまうとブルペンでの球数が加算され、結局のところ佐々木への負担は先発とさほど変わらない、故にブルペンにすら行かせない。国保監督はこうも言っていた。プレッシャーのかかる試合では故障のリスクが高まる、とも。つまり岩手県大会の決勝戦や注目度が高い甲子園での登板は故障リスクが高く、佐々木の「将来」のためにプラスにならないと判断した、というところだろう。これは国保監督の「提案」あるいは「実験」なのかもしれない。マスコミは勝手に「怪物」と呼ぶけれど、全く「怪物」に値するような成績を残してない投手がどれだけ成長するものなのか、地方予選の決勝戦で登板を回避した投手が、「酷使」され続けた投手よりどれだけ成長するものなのか。「佐々木」という好素材を利用して、選手権大会の日程問題、球数問題に一石投じたかった…。  

 

 万が一、決勝戦で先発した投手が花巻東を完封し、甲子園出場していたら、佐々木は炎天下の甲子園で投げたのだろうか。30度を超える気温を登板回避の理由の一つにあげたほど監督は気温を気にしていたから、昼間は40度近くになるという噂の甲子園のマウンドに佐々木を立たせることはなかったかもしれない。うまいこと第一試合、第四試合なんかに組まれたら、あるいは登板させたかもしれない。

かつて、常総の木内監督は「私学はエースと心中じゃダメ」との名言をのこした。この言葉の意味することはこうだ。「エースが打たれても、あいつが打たれたら仕方ないと、無策で負けを受け入れることは許されない」。エースが打たれたら、何人ピッチャーを変えても、あの手この手で勝ちに行く。それが木内野球だった。大事な試合では、ベンチで最初の1点を取りに行く、とも言っていたな。大船渡の監督は、エースを投げさせないということでエースとの「心中」を選んだのだろうか。それとも、甲子園を目指すことだけが高校野球ではないと、こういう高校野球好きの「外野」どもに、メッセージを送ってみせたか。  

 

 ネットのおかげで、地方予選がパソコンとスマホで観れる、リアルタイムで。テレビ、スマホ、パソコンをフル活用して、3試合4試合を同時進行で観てた。優勝した選手たちの号泣、あの、佐々木同様ドラ1間違いない星稜の奥川が号泣していた。奥川のように去年の夏も今年の春も甲子園に出ている投手だってあれだけ泣く。それが甲子園なのだろう。そう云えば、佐々木も泣いてた。決勝で負けたときも泣いていたが、4回戦、延長12回で勝利したあとのこと。まだ4回戦なのに泣いている佐々木を見て、心の優しい子だと思いつつ、佐々木はほとんど苦しい試合を戦ったことがないことに改めて気づかされた。そして、決勝戦での登板もないまま大船渡高校は敗れたため、あの4回戦が佐々木の高校野球生活で最も厳しい試合になった。仮にU-18に選ばれたとしても、そこまでのプレッシャーはないだろうし。ただ、甲子園出場を見送ってまで保護した佐々木を国保監督は代表に送り込むのか。先日の合宿と違って、W杯は「連投」がありうる。国保監督の判断がまたしても注目を集めそう。  

 

 先日、オリックスの山岡が高校3年の夏を振り返ってこんなことを言っていた。広島県大会決勝、広島新庄田口と延長15回投げ合って、翌々日の再試合、味方が1点取ったとき、「これで終わっちゃうのか」と寂しい気持ちになった、と。楽しい時間が終わることが残念だったらしい。ちなみにこの大会の山岡、準々決勝、準決勝、決勝戦延長15回、決勝戦再試合まで全て完投している。そういや、山岡もダルビッシュに呟かれたひとり。興南宮城といい山岡といい、最後の夏投げまくった投手のことを褒めているのは、まあ、偶然だろうな。

at 05:33, 古書赤いドリル, -

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