<< 川崎南町 | main | 同志よ >>

彼岸と此岸

 煙草の値上、とうに禁煙しているぼくには全くどうでもいいニュースだが、100円の均一本が4冊買える金額、喫煙者にしてみると衝撃だろう。喫煙者の衝撃といえば、インドネシアの2歳児の吸いっぷりも衝撃的、さらにはその堂々たる体格にも。あの体格の良さと喫煙には因果関係ないのかな。NHKのニュース映像を見ていたら、喫煙坊やが「煙草頂戴」と駄々をこねていた。騒動になって慌てて親も「禁煙」を命じたのか、代わりに与えられた玩具を放り投げ煙草を求める、中毒に苦しむ2歳児。「中毒」は怖い。のたうつ2歳児も可哀想だが、コカイン所持で逮捕されたシャネルズのメンバー。靴墨塗って変装していれば身分もばれなかったのに、ということはないだろうが簡単にやめられるものじゃないということは、彼の逮捕を待たなくても幾多の先人が告白している。コカイン中毒に苦しみ、破滅的な15年間の秘密を綴った平野威馬雄の『イン者の告白』、これは奇書の類と言ってよいと思う。※インはどうやっても見つけられませんでしたが、やまいだれに陰という字です。

 平野威馬雄はフランス文学者で作家でUFOの研究者で「おばけ」に関する著書も多く、娘は料理研究家の平野レミで娘婿は和田誠で・・・ロフトの平野悠さんは甥って本当?そんな平野威馬雄氏がコカインからはじまってあらゆるドラッグを経験し家庭を崩壊させ自ら松沢病院に入院して・・・といった数奇すぎる「空白の15年」を語ったのが『イン者の告白』という本、特筆すべきは松沢病院に入院中、あの蘆原将軍に会っているのだ!当時のマスコミも不思議な「スター」を作ったものである。脳病院の「将軍」、果ては「天皇」を名乗っていたらしい。蘆原将軍の存在については出久根達郎氏の『古本綺譚』で知った。経堂から甲州街道へ抜けるとき、松沢病院の横を通り過ぎるのだが、その偉容というか把握できない広大さに驚く、ここに蘆原将軍も平野威馬雄氏もいたわけだ。平野氏の後年のUFO信者ぶりもコカイン中毒時代に様々なサイケデリックな映像を見たためと解すれば腑に落ちる。そもそも面白い人には違いない。

 ぼくは何中毒か?「買い物」中毒或いは「焼肉」中毒?朝から晩まで本を買いたくて仕方ないし、焼肉食べたいタレで塩で、ライスとともに、そんなことばかり考えている。誰もが何らかの中毒患者でそれがたまたま合法だったり非合法だったりする、幸い焼肉は合法でよかった、しかし突然「非合法」の領域に立たされている人も。検察特捜部の元特捜部長やら。ある日突然「こっち側」から「あっち側」の住人になっている、お父さんは検察庁で・・・なんて周囲から羨望視されていたはずの一家の主が連日「犯罪者」としてニュースに顔を出す、なんと危うい境界線か。食肉偽装にしろ、今回の検察の証拠捏造にしろ、業界内の常識が突然非常識に転位したことによって起きた「事件」である。「仕事」としてやっていたことがある日「犯罪」に変わっていた・・・。新大阪駅だったか、元特捜部長の大坪氏の表情を見ると、「朝起きたら世界中にただひとり自分だけが生き残っていた」というSF小説の登場人物になってしまったような戸惑いが感じられた。検察がやっていた証拠捏造のような悪事は徹底的に叩かれてしかるべきだけど、「普通」の人が突然「非日常」に立たされる怖さを思い知らされる。食肉が違法の時代が到来したら、ぼくは焼肉をやめられるだろうか。禁酒法時代のように、秘密の焼肉パーティを楽しまないとは言えない。「こっち側」と「あっち側」を隔てている境界線、そんなものは本当にあるのだろうか。蘆原将軍から視えていた世界、それは松沢病院の外側に広がる巨大な「脳病院」のようなものだったのかもしれない。

 

 

at 07:53, 古書赤いドリル, -

comments(0), trackbacks(0), - -

comment









trackback
url:http://blog.aka-drill.com/trackback/80